糖尿病の治療方法(運動療法)

糖尿病の治療においては血糖値のコントロールが基本的に重要ですが、そのために運動療法を行っていくことは重要な治療手段のひとつです。
運動療法は血糖値を下げる効果をはじめ、脂肪燃焼促進による減量効果や心肺機能の改善、向上が期待できます。

運動療法の効果について挙げますと、運動には筋肉の収縮が伴います。
そして筋肉が収縮する際のエネルギー源として酸素やブドウ糖が利用されます。
そのため運動を行うことによって筋肉が酸素を媒体としてブドウ糖を分解、消費することによって血糖値が下がりやすくなります。
なお、運動による血糖値の変動にはホルモンが関与しています。

運動時には急激な低血糖を防ぐためにインスリンの低下とグルカゴンの上昇で肝臓における糖の放出が増えて補正されるため血糖値の変化はほとんどありません。
一方、糖尿病で運動を行った際にはインスリンの低下が生じにくくなり、グルカゴンの上昇が抑えられ肝臓における糖の放出が増えず血糖値が下がります。
つまり高血糖であっても運動で筋肉がブドウ糖をしっかり利用することによって血糖値が補正されているといえます。

このように運動療法は糖尿病での血糖コントロールには有用な治療手段となります。
そこで糖尿病にはどのような運動が適しているかについてですが、運動の種類には大きく分けて有酸素運動と無酸素運動(またはレジスタンス運動ともいいます)があります。
有酸素運動の代表的なものにはウオーキングやジョギング、自転車漕ぎなどがあります。
一方の無酸素運動にはダンベルを使った運動やスクワットなどがあります。
いずれも有用な方法ですが、特に糖尿病ではしっかり酸素やブドウ糖を利用できて取り組みやすい有酸素運動が適していることが多いです。

運動の方法についてですが、いずれの運動方法であっても無理なく継続できる方法を選ぶことが重要です。
そして運動の強度や時間、頻度も重要です。
強度が強すぎる運動は疲労をもたらすほかに長続きしにくい要因となり、効果が得られにくくなる可能性があります。
しかし逆に強度が弱く、短時間の運動や頻度が少なすぎても効果が得られにくくなる可能性があります。
したがって、運動は息切れせずやや疲れたという程度に、そしてやや汗ばむ程度で20分~60分を目安として、少なくとも週3回行うことで効果が得られやすくなります。

またその効果は1日以上持続するため、休息日を入れながら定期的に行うことが良いといえます。
なお、運動に際しては心肺への負担を軽減するために準備運動と整理運動を行うことや、低血糖を回避するために食前は避けて血糖値が上がりやすい食後1時間~2時間の間が良いといえます。

糖尿病患者で運動をしてはいけない人がいる?

糖尿病に対する運動療法は高血糖を改善して血糖値のコントロールをしていくための有用な治療手段ですが進行した合併症、例えば眼底出血の可能性がある増殖網膜症がある場合など、その時の病態によっては運動による症状の悪化を防ぐために避けた方が良い場合があります。
しかしながら、筋力低下や心肺機能低下のリスクや糖尿病における血糖値のコントロール、合併症の改善や悪化の予防という観点から運動療法を行うことが必要であり重要であるといえます。
したがって、進行した合併症があってもその病態が安定したのちに軽めの体操などの運動を行っていくことは可能です。
このように合併症がある場合などにおける運動の方法について以下に挙げます。

例えば心疾患を合併している場合には、血圧や脈拍などのバイタルサインを見ながらウオーキングやトレッドミルなどの有酸素運動を行っていくという方法があります。
なお、運動療法の基本として無理のない運動時間から始めて少しずつ時間や強度、頻度を増やしていく方法があります。

このような運動を行うことによって血糖値のコントロールだけでなく心肺機能の向上に繋がりやすくなります。
また糖尿病性末梢神経障害がある場合においては下肢に荷重をかける運動が難しいことがありますが、これに対する運動方法としては下肢に荷重がかかりにくいような水泳や自転車漕ぎ、あるいは椅子に座って上半身の運動や脚挙げの運動を行うなどといった方法があります。

上記の他にもI型糖尿病の場合の運動方法についてですが、I型糖尿病ではインスリンの絶対量の不足からインスリン補充が必要であるため、運動による低血糖のリスクがあります。
しかし、これに対しては血糖値を把握したうえで運動前にインスリンの量を調節したり運動の間で栄養補給をしながら運動を行っていくことが可能であるといえます。
これらのようにたとえ合併症があっても、状態に応じた運動方法の工夫をすることで糖尿病や合併症の病態をコントロールして身体機能の維持、改善に繋げていくことが可能であるといえます。

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